婦人科診療紹介
金沢大学産科婦人科では、全ての婦人科疾患の診断、治療を行なっていますが、特にこのセクションでは、当院で治療に力を入れている疾患、新しく行なっている治療法等について説明します。当科での診断・治療は原則として医師全員参加によるミーティングで決定されます。様々な分野の専門家がお互いに意見を出し合うことで、よりよい医療を患者様に受けていただくとともに、医療者間の治療への認識を統一することが可能になります。
婦人科癌 (2026年8月19日更新)
子宮頸癌
子宮頸癌は子宮の入り口である子宮頸部にできる癌で、子宮体部にできる子宮体癌とは区別されています。ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が発症に関与していることが知られており、近年は発症の若年化が問題となっています。早期であれば手術(広汎子宮全摘出術など)が中心となります。ごく早期の場合には、病巣部のみを切除して子宮を温存できることもあります(妊孕性温存治療)。進行して手術が難しい場合には放射線治療が中心となります。当院では抗癌剤を併用する同時化学放射線療法(CCRT)に加え、組織内照射を併用したハイブリッド型の腔内照射(ハイブリッドRALS)にも対応しており、これまで制御が難しかった大きな腫瘍に対しても局所制御率の向上に努めています。また、骨盤リンパ節への転移が複数ある場合には腹腔鏡下に傍大動脈リンパ節生検を行い、その結果をもとに照射範囲を広げる必要があるかを判断することで、必要な範囲に限定した適切な照射計画を心がけています。さらに近年ではCCRTに免疫チェックポイント阻害薬を上乗せする治療が新たな標準治療として承認され、当科でも積極的に導入し、より高い治療効果を目指しています。遠隔転移を伴う場合や再発した場合は、抗癌剤に免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬を組み合わせた薬物療法が中心となります。当科で最新のエビデンスに基づいた治療を取り入れ、患者様の病状に応じてご提案しています。
子宮体癌
子宮体癌は子宮内腔を覆う子宮内膜から発生する癌で、女性ホルモン(エストロゲン)の過剰な刺激が発症に関与していると考えられています。近年、生活習慣の欧米化に伴い日本でも増加傾向にあります。治療の基本は手術で、子宮・卵巣・卵管の摘出に加え、必要に応じてリンパ節の評価を行います。当科ではロボット支援下手術をはじめとする低侵襲手術(MIS)を積極的に取り入れているほか、リンパ節の状態を低侵襲に評価するセンチネルリンパ節ナビゲーション手術(SNNS)を導入し、過剰なリンパ節郭清を避けながら下肢リンパ浮腫などの合併症軽減に努めています。進行・再発例に対する薬物療法では、癌細胞の遺伝子検査(ミスマッチ修復機能の状態やゲノムの特徴に基づく分類)を行い、そのタイプに応じた薬剤を選ぶオーダーメイドの治療として、免疫チェックポイント阻害薬とPARP阻害薬を組み合わせた治療など最新のエビデンスに基づく薬物療法を取り入れています。
卵巣癌
卵巣にできる腫瘍には良性から境界悪性、悪性まで幅広い種類があります。ホルモン分泌による症状が出ることもありますが、多くは無症状のまま進行し、腫瘍が大きくなったり腹水が貯まったりして初めて気づかれます。悪性の場合、治療の基本は手術と抗癌剤治療です。診断時に切除可能な場合(PDS)はもちろん、抗癌剤治療を先行させてから手術を行う場合(IDS)でも、病変を残さず摘出することが予後の改善につながるとされており、当科では根治性を追求した手術を心がけています。他臓器への浸潤を伴い合併切除が必要となる場合にも、消化管外科・泌尿器科など他科と密に連携をとっており、各科が協力して治療にあたる体制を整えています。早期(I期)と考えられる場合には、正確な進行期診断(staging)のための手術を行いますが、組織型によってリンパ節郭清の要否を判断し、過度な侵襲とならないよう配慮しています。また腫瘍が小さくMISに適した症例では、先進医療として腹腔鏡下手術にも積極的に取り組んでいます。抗癌剤治療では分子標的薬を組み合わせた治療を行い、支持療法も活用しながら生活の質を保って治療を続けられるよう努めています。また、相同組換え修復欠損(HRD)やBRCA遺伝子変異の有無を調べ、PARP阻害薬による維持療法を取り入れることで再発予防に努めています。再発した場合の治療についても、抗体薬物複合体(ADC)など国内導入が進みつつある新規薬剤の動向に注目し、患者様に最新の治療選択肢をご提供できるよう努めています。
外来化学療法
これまで悪性腫瘍に対する抗癌剤治療は長期間の入院を必要としてきましたが、近年の薬剤の進歩により、入院を必要としない外来化学療法が可能となってきています。当科では子宮頸癌・子宮体癌・卵巣癌など婦人科悪性腫瘍の化学療法や免疫チェックポイント阻害薬治療の多くを外来で行っており、通院での治療により患者様の日常生活・社会生活への影響を最小限に抑えられるよう努めています。
腹腔鏡手術・ロボット支援下手術
腹壁に開けた小さな穴から内視鏡やロボットアームを挿入して行う手術で、傷が小さく目立ちにくいだけでなく、術後の回復が早く入院期間も短く済むのが特徴です。当科には腹腔鏡技術認定医が複数在籍しており、安全性の高い低侵襲手術を提供できる体制を整えています。卵巣嚢腫・子宮内膜症・子宮筋腫などの良性疾患はもちろん、子宮体癌をはじめとする婦人科悪性腫瘍に対しても腹腔鏡下手術・ロボット支援下手術を積極的に導入しています。悪性腫瘍の手術ではリンパ節転移の評価をより低侵襲に行うセンチネルリンパ節ナビゲーション手術(SNNS)も取り入れており、根治性を保ちながら患者様の身体的負担を軽減できるよう努めています。
子宮鏡手術
子宮口から挿入した内視鏡で子宮内の病変を診断・治療する方法です。子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫など子宮内の病変が対象となりますが、お腹を切ることなく治療できるため身体への負担が非常に小さいのが特徴です。当科では外来での子宮鏡検査や日帰り子宮鏡手術にも積極的に取り組んでおり、入院の負担を抑えながら早期の診断・治療を受けていただくことができます。




